日本茶道史序説

西堀一三/河原書店/1937年。

碩学、西堀先生による茶道史入門、みたいな本。

今私が読むといささか古くさいが、若い頃この本読んで、その内容通りの事を未だに言っている老先生は結構おられるのでは、とか思う。

それを考えると、熊倉さんで育った世代があと40年くらいは支配するんではないかという気もするね。

まぁ全体として目新しい話はない。いや、「普斎のでかな」の話は知らなかったかな。

杉木普斎の茶に来た稲垣侯、大変にお菓子を気に入ってお代りしたあげく、後に使者を出してお菓子のご製を聞いて来た。「ありあわせに友人が餅で作ったものらしいです(餅でかな製したものの様でした)」と答えた。
本当は近所の菓子屋の製だったのにわざととぼけた、というお話。
これはいじわるしているわけではなく、非日常は非日常のままにしておくのがいいんだよ、毎日食えるようになったらつまんないよ?というお話か。


さて、西堀先生は西堀先生の中で当り前だ、と思っている事は出典を書いてくれない。

それだけならいいんだけど、時折多数派の茶説でないのを載せているので、信頼感が微妙なんだよね。

利休が花入の耳を欠く話は通常、花入の耳を利休が欠いて紹鴎が懐から金鎚を出して見せるものだが、西堀先生のは花入の耳をある茶人が欠いて利休が懐から金鎚を出す話になっている。

この話どこから出たんだろう?という疑問以前に、資料にあたらずにうろ覚えで本書いてねーか?という疑惑があるんだよね…。