山上宗二記入門
神津朝夫/角川学芸出版/2007年。
著者が読んでそうだけど、なにがし庵は退かぬ、媚びぬ、省みぬーぅ!
本書は「山上宗二記」を翻刻レベルから見直し、詳細な詳細な注を付けたもの。非常におもしろかった。
重箱の穴をつつくか、まだ不詳の部分をなんとかして調べるか。山上宗二記に対し、あとどんな仕事が残っているのだろう?私が文帝なら「此為不朽矣」と叫ぶ所ですな。
私が一番興奮したのは「茶室の歴史」の部分。
「上て切」と「戻り点前」、「くぐり木戸」。
ああ、いままで山上宗二記を流して読んでいたんだなぁ、と実感。
ただ、紹鴎四畳半の「h.縁の水こぼす所」は何をするとこなのか結局わからず。水こぼすのは「m.水遣う走り」と機能がかぶってる?
鳥居引拙。その実在を疑ってなかった。資料の読み方やっぱ浅いと反省。
台子飾り。東山御物でない上にぜんぜん皆具でもなかったとは。
「赤は雑なる心なり/黒は古き心なり」の発言は文脈を無視するべきではない、という指摘、天正時代に珠光/紹鴎の茶杓が名物に含まれていない、という指摘も面白い。
あと、息子道七宛の山上宗二記もあった筈だが、これも「以有口伝」の記述なんだろうか?息子から謝礼とるわけにもいかんので記述レベルが変わっているのかどうか?ってトコがよく判らなかったかな。
んで、2点気になる所。
その1。
いくらなんでもこの狗頭羊肉なタイトルはナシではないか?入門、の門のレベルが無門関レベルにあがってはいないか?
三国志入門、という本を買ったらびっしり裴松之注の陳寿の正史だった、みたいな感じです。
その2。
先行研究の間違いを否定するのを避ける、という配慮がどうも気になる。
科学論文の場合は「何々氏の論文にこうあるが、これこれこういう理由で間違っている」と、先行研究を直接否定するのは当然。「といった通説があるが、こう解釈したい」といったやんわりした書き方はしない筈。歴史学に関しては裴松之だって孫盛否定しまくりですよ?
……ま、匿名ブロガーの私がいうのもなんですけれどもね。
- 作者: 神津朝夫
- 出版社/メーカー: 角川学芸出版
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