置土産浮世之茶話 その6 水屋仕廻

“水屋仕廻の事”より。

或紳士來て。わが家には召遣も多分に是あり。水屋仕廻ひ。並びに茶亭の酒掃は。みづから致さずとも宜しきやと問ふ。
余答へて。士は馬に乗らずやと問ふ。
士曰く。馬は其の術を得たりと。
余馬の酒ぎは知らずやと問ふ。
士既に熟知せいると云ふ。
余夫道徳茶(方今世上に流行する歌舞伎茶の遊藝また花月幇間茶とは。大に違へり)は酒掃應對より入りて。賓主互換の妙理を究め。清淨法身を得んが爲なり。
素より茶亭の酒掃を初め。水屋仕廻ひはせざるべからず。
貴紳と雖も馬の酒ぎを知らされば。戦場の間に合ず。
水屋仕廻ひを知らざれば。茶道徳儀の人とは謂わず。

おまえ男なら馬乗れるだろ?馬の洗い方も知ってるよな?
茶人なら水屋仕事もできんでどうするよ!

という事。

乗馬が引き合いに出されているのが時代を感じて面白い。


今の世ならさしづめ洗車の話を例えにするのだろうか。

さて。洗車が好きで好きでたまらん、乗らなくても掃除する!という洗車マニア、というのも世の中にはいる。

そういう人は茶人にするといい茶人になるのかもしんない。