茶道春秋 その2

本書は耳庵のお茶エッセイ集なんだけど、さまざまな茶人に関する言及が面白い。

今一人面倒な茶人に田中親美大人がある。
(中略)
だから茶客としては恐らく日本一の長老であるのであるが、不思議にも自分で茶室を設けて客を招くということはない。
今から十年も前のことであったが、鈍翁や団狸山翁、三渓翁などの友達が「田中さんはあの位にいい掛物を沢山持ち、いい道具を持ちながら、茶をせぬのはいまだ茶室がないからであろう。いえば断わる漢だから一つ無断で席を造って遣ろう」と一味の人々で話をきめ、世話好きの鈍翁は田中邸に行って序でにそれとなく席の場所まで見定めておいて数寄屋大工の木村清兵衛に図を書かせ
(中略)
喫驚したのは当の田中大人で、遂に百万陳謝して茶室寄贈を断わられたという珍談が残っている。

こんな感じ。


耳庵は道具を送られて茶をはじめた人間である。

田中親美は、道具持ちなのに茶をしないもんだから茶室を送られそうになった。

しかし、この鈍翁たちの「プッシャー」っぷりってのはなんなんだろうなぁ。同好の士を強制的にでも作らにゃならんという強迫観念があったとしか思えん。