茶人言行録2 手取鍋


茶人言行録では「手取鍋の侘び茶人」と称される者を三人紹介している。

  1. 一路庵禅海(原典:堺鑑)
  2. 大津道観(原典:野史、安澹泊史論)
  3. 粟田口善法(原典:野史、叢語)


本書が単なる人名辞典で終わらないのは、この三人に対し、調査や検討を惜しんでいない事である。

豊太閤が善法に與へたと云はれる手取鐺が京都粟田口の良恩寺に現存して居ることを聞いたから、私は或人の紹介を得て之れを縦覧することが出來た。
今其の手取釜と云ふものを一見すると、之れでは到底飯も粥も烹ることが出來さうにも思へない。

なんとフィールドワークまでしている。


そして:

かやうに三人が三人共に同じやうに手取鐺を以て茶の湯を樂しみ、叉た同じやうに之れを以て朝夕の糧を調理したと云ふことは、寔に不思議の至りであつて、
(中略)
詮じ詰めて來ると此の三人と云ふ者は、果して實在の人物であつた乎、或は又た其の中の一人だけが實在の人物であつて、他の者は假作潤飾された假想人物ではなからう乎と云ふ疑念が生じて來るのである。

先人の伝承をうのみにはしないぞ、という強い気持ちもいいよね。


もっとも三人のどれが本歌か、あるいは三人とも非実在茶人かの結論までは出せていないんだけど。


著者は一路庵禅海が一番本歌っぽく感じている様。


私は粟田口善法しか知らなかったなぁ。
多分、粟田口善法が一番有名でね?