三つの紹鴎茄子
三菱一号館美術館にて
- 付藻茄子(松永茄子)
- 松本茄子(紹鴎茄子)
の展示があった。
二つの茄子が大正名器鑑のソレなら、漆繕いしてアレってことなのか。全然判んなかった。すごい繕い方だ。
さて。展示側は「松本茄子(紹鴎茄子)」としている。
紹鴎茄子に関しては
http://d.hatena.ne.jp/plusminusx3/20090528
に、茶道月報昭和十二年一月号 高橋梅園の記事を紹介した。
でも読み直すとあっさりしすぎていて、あんまり伝わるものがないので、高橋梅園の云う、紹鴎茄子は本当は三つあった、という件を整理してみた。
1)太閤所持の紹鴎茄子
北野大茶湯にて拝殿内に展示。
山上宗二記に昔松本所持と書かれているもの。
伝来は松本→紹鴎→宗瓦→今井宗久→信長→太閤。
後世には伝わらず。おそらく大坂城落城時に焼失。
2)辻玄哉の紹鴎茄子
辻玄哉所持。北野大茶湯にて展示後、鍋島家へ。のち松平家→益田信世。
古今名物類聚に「底にみおつくし」とあるのは誤伝。
3)みおつくし茄子
草人木に記載あり。
紹鴎→下京片山某→針屋紹珍→前東秦院門跡→宗頼粟津左近→河村瑞軒→瓦屋平兵衛→坂本周斎→鴻池家。
大正名器鑑の松本珠報→鳥居引拙…というのは1)の太閤所持のものとの混同との事。
1)の太閤所持の紹鴎茄子が、松本茄子である、というのが岩崎家の主張なのだろう。しかし、大正名器鑑にある松本茄子の伝来には紹鴎は含まれていない。
紹鴎から伝来しない紹鴎茄子などある筈がない。
大正名器鑑に執筆協力し、そこにミスがあった、という記事を書いた高橋梅園が、
大正名器鑑の松本茄子の記事を知らない筈もまた、ない。
つまり、太閤所持紹鴎茄子と松本茄子ってのはそもそも別のものなのではないだろうか?