茶の精神 その4 かぶとむし

著者は、濃茶の廻し呑みの原点は、大燈国師であるという。

大燈國師が京都の五條橋の下で乞食の仲間に入つて修行していた時代に、橋下で仲間の乞食連中と一つの茶碗で湯を飲み廻していたことが動機となつて、今日の濃茶の様式ができたものだといわれてゐる。

乞食に聖性を見る、という考え方は古来からあるわけだけれど、だからといってこれはないわぁ。


さて、その大燈国師後醍醐天皇が召そうとした時の話。

しかし大燈国師は乞食の中にまじって出てこない。

探索方の萬里小路藤房卿が知恵をしぼる。

そこで、いろいろ調べてみると、大燈國師は甜瓜が非常に好きであることがわかつた。
藤房卿はある日、五條橋の乞食群に甜瓜を施すという布令を出した。
これを聞いた乞食は群をなして來た。
藤房卿はかれらを試みるに、「脚なくして來たりたるもの、この甜瓜を持ち去れ」と役人に云わせた。
これを聞いて、多くの乞食は茫然として退却したが、ただひとりその中に「手なくして出せ」といつたものがあつた。

この大燈国師、なんか早起きしたら夏の雑木林で捕まえる事ができる生き物みたいだ。