技−手づくり一筋
飯田一男/東京図書/1981年。
私は職人に関する本が好きで、良く読んでいる。
自作茶道具のヒントになったりもするしね。
で、そのつもりでこの本を買ったが、割と意外なラインナップで茶道具系の知見としてはあまり役には立たなかった。
伝統系でない職人…「廃車バイクの解体業者」とか、ナニソレ?みたいなのも含まれているから。
そんな中でこっちの世界の話は「表具師 庄田信雄さん」について。
アイロンに相当するよう、肌ウラを貼ることからはじまります。
その絹なり紙なりに描いてあるものはクシャクシャですからね。
ピンとさせるために、それと同じような薄い紙をウラ打ちするんです。
からはじまって、約3ページ、文章だけで掛軸の作り方を説明してくれる。
ま、一応表具の作り方の本も読んだことあるので、手順は理解していたつもり。
でも:
この角の裏打ちしてある部分、これは軸の重みで破れるのを補強しているわけ。
なぜそうするのか、を解説してくれていて、理解が深まる。
また、掛軸の業界ウラ話も面白い。
上から二本垂れているものを風帯。本当はあれはブラブラになっているんだけど、お客さんがアレを巻けないんです。こわしちゃう。だから貼りこんじゃう。
確かに茶でもやっている人でなきゃ、軸の巻き方なんて判んないかもしんないね。
そういう場合は貼り風帯か…。
二・二六事件が起きて高橋是清が殺されたんです。
死んだとたんに表装の仕事がうちにワーッときたんです。
考えたっておかしいよ。それだけの人に書いてもらったんなら、その時点で表装をたのむのが当り前でしょ。
んー、正直いい話ではないけど、まぁこの手の話はあるでしょうなあ。
棺を蓋いて事定まる。「末路が酷かったら軸の作り損」みたいな考え方は理解はできるもん。
てめーの筆跡自体を尊重したわけじゃねーんだぜ、的な冷酷な考え方ではあるけれども。
- 作者: 飯田一男
- 出版社/メーカー: 東京図書
- 発売日: 1981/01
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