茶道雑話 その2 たばこ

圓能斎の遺品としてもらった煙草盆の話から、たばこについて調べ出した井口海仙。

その時分、茶道具等に興味がなかつたので、遺品分けの時、自分からすゝんで、此の煙草盆一つを貰つたのだ。

24歳の井口海仙には、茶より煙草ってことだったのか。
裏千家の形見分け、案外地味なもんだね。

咄哉庵の「三千家代々好物」をみても、利休には煙草盆、煙管等の好み物がないし、茶會記にも、煙草盆等書かれてゐないところから、その時代に、煙草が茶室で用ひられてゐなかつた事は想像出來る。

煙草の輸入は天正の頃、慶長の頃と諸説あるけれど、利休の生前はまだお茶に採り入れられてはいなかった、というのが井口海仙の調べたところ。

で、ここから井口海仙が調べたさまざまな好み物煙草道具が羅列される(でも省略)。

ただ、気になるのは以下の一文。

淡々斎など、自分では喫煙しないが、煙草盆の好みは、二三に止らないと思ふ。

えーーーー?そんなでいいの?

好まぬのに好み物、というのはどうなんだろう。
家元と好み物の関係について考えさせられるね。


さて、この話のオチは以下の通り。

さて、こんな事を書いてゐる折も折、ある人から、手附の亭主煙草盆を貰つた。
箱書に曰く「利休好桑釣瓶煙草盆」と。
私は思はず微苦笑をもらした。
そして、こんなくだらない考證なんか、もう止めやうと思つた。
それよりも、先づ一服、喫まんかなである。

好きだ、井口海仙。