茶道雑話 その4 茶わん
海仙がある茶会で遭遇したできごと。
ある日、ある茶會で、私は、慶入の茶碗で、薄茶を飲んでゐた。
茶碗は、私の兩の掌に、コツソリ入る位の大きさで、ジツと持つてゐると、湯の温みが、やはらかい土の豊肌を通してほのかに、掌に傳つてくる。
私は其快い感觸を樂しみながら、ゆる/\茶を飲んでゐると、お點前をしてゐた中年の先生らしい男が
「如何です。茶碗も、貳参百圓は出さないと、おいしく茶が飲めません」
と、半東に出てゐた主人の方をチラツと身ながら、問ふてもゐぬその茶碗の價格を、大聲で披露に及んだ。
私はそれを聞くと、今までのやはらかい土の感觸が急につめたい金貨の手ざはりに變つた様な氣がして、茶碗を下にをいてしまつた。
慶入の茶碗を楽しんでいたら、値段の話をされてげんなりした、というお話。
千家の一員なのに、高い楽茶碗を否定するのかいな?スゲー、と思いきや、
慶入の茶碗が壱圓や貳圓で買へるとは思つてゐないし、貳参百圓と云はれても、決して高いとは思はない。が、高價な茶碗だから、お茶がおいしく飲めるとは私は思つてゐない。
高い茶碗を否定するのではなく、金の話をされたのがむかついたワケね。
まぁそれはそれでアリ、かな?
ところで。
主人が半東で、代点した人が茶道具の銭金話をしてきた、というのは、もしかすると代点した人は道具屋だったんじゃね?
んで、千家の血縁の人に、茶道具の売り込みをしようとしてたんじゃね?
正直他が思い付かんのだけど。