北村美術館 秋侘ぶ

北村さんの道具は、茶碗よりも懐石道具とか、盆とかがいい感じ、という印象。
今回もそう。


寄付の釉裏紅の汲み出し碗と、時代木地殴の汲み出し盆の組合せが素敵。

懐石道具の八寸には堅地屋清兵衛の隅丸硯蓋。八寸の原点に戻りつつも美麗な蒔絵の美しさ。


掛け物は豪華にも兀庵普寧寧墨跡、石山切、藪内竹心の女郎花絵讃と楽しめたが、松永耳庵の「茶事の礼」消息が一番印象的か。

御庭苑古塔名石等も眺め入る間に夕色の迫り来るを惜しむばかりと

とか書いてあって、楽しむと言うよりむしろ勉強になる。


さて、「秋侘ぶ」と言っているものの、炉の会。

茶壷がないから口切りでなく炉開きか。つまり本来そんなに侘びていない会。薄茶席は宗哲の真塗炉縁なのがその証拠。

与次郎の尻張釜と、文人趣味な呉須菱馬手林和靖図水指。
春正作粉溜桔梗文蒔絵平棗。
少々きれい過ぎる御本堅手片身替茶碗と、そつのない宗入赤楽の替茶碗。

式正気味の席をなんとかバランスとらせて侘びにもって行こうと頑張った道具組か。

しかし、遠州好 鉄刀木金砂子箔置風炉先の、砂子の春霞めいた風情が全体をだいなしにしている様で少々残念であった。