大西清右衛門美術館 朽ちの美

私は尾垂れ釜が大好きだ。やつれ風炉だって、嫌いじゃない。

でも、今回の展示はかなり微妙だった。

例えば「七宝浜松地紋甑釜」。

蓋も割れ、鎹が打って継いでであるが、良く見ると鎹も鋳造による模様に過ぎない。

こういう「寂ばしたる」いや「錆ばしたる」釜は、げんなりする。


そんな中で古びた寺の釜を打ち欠いて作った、本来の意味での「鉄やつれ風炉」の展示は、味わい深く大変良かった。


でも全体としては今回の展示は、やつれさせよう、という作意が見えすぎていかんかったな。



茶室のしつらえは非常に良かった。

まず寄付の大綱和尚の「月下狸の図」でわしづかみである。

小夜かけて 打つやたぬきのはらづつみ 月より外に聞人もなし

狸ギザカワユス。

はらつづみに呼応する立鼓釜。
やつれ気味の鉄朝鮮風炉
伊羅保茶碗と紹鴎大棗。
伊部焼の水指がこれらを上手にくくって堂々たる名残りの茶である。
替えの信楽茶碗 銘:末廣も、絶妙に傾いた面白い茶碗。

このしつらえ見れただけで充分に価値があった。