石州秘伝 石州三百ヶ条4 床に墨蹟と花入と有之事

墨跡と花の話。

石州秘伝本:

床に墨蹟と花入と有之事

常は初に墨蹟後に花を入る也これを片飾りといふ。
二色共一度に飾るを諸飾りといふ。常にはせぬ事なり。
然れども旅立の客が又は事により急ぎの時早々しもうやうにする事あり又は同じやうなる
置合のつづく時に替へて如斯する事も有り。
初に墨蹟かくる事は此言句を見て心法を悟り意をいさぎよくする也。
又絵をかくる事もあり後に花を入るは初の心屈したるをのべて心を新に散せんため也。
又初かけ物かけ中立候後もかけ物不取して花を入る事もあり。掛物賞翫の時かやうにも致し惣して茶の湯置合に数の偶になるを嫌ふ半になるやうにかざる也。
釜は数の外なり墨蹟花入と置時は偶なり此時は羽箒カン香合炭斗等の類を置合て奇数になしてよし水指の前に茶入茶碗置くにも此心なりこれは数奇屋にての心なり書院にては各別なり。

以前天正の頃には片飾りは無かった事は書いた。
http://d.hatena.ne.jp/plusminusx3/20091220

でもこの時期には片飾り:墨跡→花の流れが成立していた様だ。

で、諸飾りは

  1. 急ぎの客
  2. 早くしまいたい時
  3. 置き合わせに変化を付けたい時

用か。…まぁ現代の大寄せも似たようなもんだね。

墨跡を掛けて覚悟して、花を入れて心を新たにする、というのがなんか近代魔術っぽくてよろしい。

あとは道具の奇数偶数・丁半論。これっていろんな茶書で言っている気がする。


茶道古典全集本:

床に墨跡と花入と有時の事

常の座敷にて、掛物・花入、或卓・香炉なと置合するを諸飾と云也、
数寄屋は侘の躰なれハ、諸飾は不用候、
初懸物なれハ花となりとも飾候也、然とも亭主急用又ハ客に用事有之て、急の時ハ、諸かさりも致すものなり、
これにより数寄屋にも諸飾有ハ、亭主隙入も有之哉と尋、用事あらハ客も随分いそく、諸事手廻早くするもの也、若、亭主隙入もこれなきと答ハ、只掛物に花を備えたると見なし置なり、若又、客の内をそく参なと有、暮つまり手燭出し候も時分あしき時歟、諸飾にもするなり、尤、客も其心得にて急く物也、

普通の座敷では諸飾りアリだけど、侘びでは無し…というのは石州秘伝本とちょっと違っている。

諸飾りは急ぎの時用なので、亭主が諸飾りにしていたら客も「お急ぎですか?」と尋ねて手廻し良くお茶を呑む…というのも不思議な話だ。客を招くに忙しい時に招くというのが不自然だし…不時の茶ってことだろか?