益田克徳翁伝2 胡座

非黙は、自分がデブだったが故に、足の楽な胡座の茶を楽しんだという。

猶其頃翁が従来の茶の湯の型を出て、茶の湯を横臥的ならしめた著しい例は、当時翁が胡坐で茶を飲む型式を案出したことである。
それは翁が非常に肥満してゐる為に、端座してゐては、足に痺れが生じて座に堪へられなかつた事情上からでもあつたが、同時にそれは、茶の湯は中心に於て端厳な礼節の精神が保たれてゐさへすれば、抹消の作法などに拘泥する必要はないと云ふ翁の持論から出たことでもあつた。

「オレの心には筋の通った礼の気持ちがあるから、体はだらけててもイイヨネ?」

という事だろうか…。

微妙に釈然としない。

そして胡坐の場合翁は爾来常に樺色の勝つてゐる茶色の木綿製の前垂みたいな腰衣を、腰以下の部分に纏ふて点茶することになつた。

なるほど。

たとえ袴をはいていても、胡座をかいた足と股間の角度による袴の折り目、その陰影は、結構うざいしろものであろう。
そういう意味では布でよりフラットな面を強調するというのは賢いかもしんない。