茶乃湯客能心得
堀内正路/四通社/1883年。
明治16年の茶の湯指導書。
奥付は「著述兼出版人 和歌山縣士族 堀内正路」といかめしい。
著者は吸江斎、住山楊甫を師としていたらしい。って事で表千家の方ですね。
前書きより。
夫レ茶道ハ必スシモ窮屈ナルモノニアラズ唯タ猥雑ヲ避ケ慇懃ヲ盡スニ過キサルヲ以テ主賓相逢フテ禮節ノ宜キヲ得ルニハ最モ樂味アルモノナり而イテ平生ノ事業繁劇ニシテ餘暇ナキノ人ハ強ヒテ之ヲ爲スベキニアラスト雖モ招待セラレテ客トナルノ心得ダケハ聊カ學ビ得ザレバ交際上不自由ナルモノナリ
要は「お茶に招かれた時に客作法知らないと不自由ですよ」という、客作法マニュアルの本です。
明治初頭に廃れた茶の湯も、10年を過ぎて、「茶を知らない人も誘われるので社交上知っておかないといけないもの」にまで復権していた、ということみたい。
この、廃れた、という状態は前書きにもある。
維新以降舊ヲ捨テ新ヲ取リ茶道ノ如キハ一時廃滅ニ歸シタルガ如ク絶ヘテ之ヲ談スルモノアラザリシガ
茶道が廃れた時期に関する、同時代の貴重な証言だと思う。