實用女子手紙の枝折6 番外2:親子丼

實用女子手紙の枝折、という本には、いろんな料理レシピも載っている。

イカラな洋食を採り入れようという動きとかが読み取れて面白い。

ただ、スープ類に香草類が使われていない、シチューに酒が使われていないなど時代を感じたりもする。

◯普通のサラダ

先づキヤベジー菜又は白菜を薄き塩水で能く洗ふて置き水を切り置き
さて牛肉を薄く切つて其の両面にバターを塗りて焼鍋に工合よく焼き
其れから水を切つて置ひた菜を葉のみむしつて皿へ盛り其の上へ右の焼肉を
竝べて其れからサラダソースを掛けてホークで交ぜて用ゆ。

どの辺が普通かは不明だし、むしろ白菜漬物の焼肉のせ、という感じがしなくもない。


もちろん、和食のレシピも載っている:

△鰹魚節の煮汁の取り方
(略)
トロ火に掛けて三四十分間ほどグラ/\と煮き、
(略)
△昆布を用ひた煮汁の出し方
(略)
水を一升ほど加えて、トロ火で一時間ほど煮きますと煮え詰まって六合ほどの嵩と成る、
(略)

出汁の取り方ひとつとっても現代と隔絶した部分がある様な…。


その中で、一番腰が抜けそうになったのがこのレシピ。

母子丼の拵え方

鶏肉の上肉を好きほどの細さに切つて、醤油砂糖味淋にて汁を成る可く多くして煮きて、
肉を引き上げ、其の殘りの汁で葱の刻むだ物を煮きて同じく上げ置き、
さて飯の炊き立てを丼へ盛り、其の上へ肉と葱とを平に竝べて殘つてる汁を
タツプリと打ち其から鶏卵を溶きたる物を其のまゝ肉の上よりかけて
蒸籠へ入れて蒸し上げて用ゆるのである。

途中までは現代の親子丼と一緒なのだが、最後の一文で、全然知らない謎の料理になっているという。

もしかすると、現代に伝わる伝統?料理のレシピの中には、数十年の時を経ただけで、ずいぶんと変質しているものもあるのかもしれない。