茶の湯 作法とたて方3 茶室と水屋とダイニング・キッチン

現代の住いには、マンションでも団地でも一般の住宅でも、ダイニングキッチンやリビングキッチンの様式がほとんどとり入れられ、キッチン(台所)をほかの居間や食事をする部屋と切り離して考えていたそれまでの形と多いにへだっております。
茶室と水屋という関係が、そのまま居間と台所という関係で、一般の住いに及んでいたのです。

いや、茶の湯は日本人の生活史の中ではごく新しい新参者に過ぎない。
でも台所と居間はもっと古くから存在した筈だ。

日常の居間と台所の関係が、茶室と水屋の関係に影響を与えた、というのがごく自然な感覚ではないだろうか?

でなければ、茶の湯がはじまる前は居間と台所はどういう関係であったか説明してほしいものだ。

ところが、リビングキッチンやダイニングキッチンがさかんになって、この様相が一変しました、居間のなかに台所がとりいれられる形になったのです。
この様相は、茶室のなかにもうけられた洞庫が次第に水屋の用をも弁ずるほどに発展し、水屋洞庫と呼ばれるようになった構造と非常によく似ております。
似ているはずです。リビングキッチンやダイニングキッチンの原型が、水屋洞庫をそなえた茶室そのものにほかならないからです。
LKやDKの様式がすごく新しい発見のようにみえても、何百年も昔に同じ構造がほとんど完璧なかたちで工夫されていたとは、驚きのほかありません。

いや、それはどうだろう?

水屋洞庫のある茶室がダイニングキッチンになった、というのなら、もっと昔からこの様式が日常に採り入れられていいと思える。

台所は飯を作る時以外はデッドスペースになる。そんな中で狭い床面積の有効利用というニーズと、電化ガス化換気扇の採用により台所で煙や煤が発生しなくなったというシーズがあっての話であって、茶の湯は関係ないのではなかろうか?