泥中庵今昔陶話5 旭亭と祥瑞の偽物

偽物師、という偽物メインに作っている職人のお話。

其の頃には旭亭と私方は隣同志であつたから、お互に遊びに行つたり來たりしてたので、旭亭の作り方を私もよく知つてゐるが、古染附おの煎茶碗を偽製するのは旭亭が日本一といつてもよい。
祥瑞の偽物の名人は澤山あるが京都では與三兵衛、耕山、源兵衛、尾張瀬戸の兵治、昔の半治である、

五条坂には祥瑞の偽物を得意とする職人が住んでいた(しかも蔵六の隣に)、という話を実におおらかにしている。
しかし、偽物師の名前をこんなにあけすけに挙げてっていいものなのだろうか?


そして蔵六が言うには、昔の偽物師は本物を前に置いて、それを見本に努力して作っていて味があったそうな。

明治の晩年に京都の陶器偽物師の工場へ見に行くと旭亭作煎茶、兵治作抹茶碗があるから、私が之れをなじると偽物師はいふ「之は私は眞物だと思ひますが旭亭ではありませんか、是は研究しにやならぬ、骨董屋も眞物だと思つて持つて來たのであります」と。

その見本も(良くできた)偽物であった、というのがお笑い草と言う事だが。


しかしなんですね。

京焼の窯の中には偽物を作っているとこもある、なんて四代目さんあたりがつぶやいたらエラい騒ぎになりそうな気がするのですが、昔はほんとうにおおらかだったんですね。