槐記17 長板の置き合わせ

享保十四年四月七日:

長板ノ道具ノ飾ハ、常風爐ノ飾トハ各別ナリ、
是ハ大秘蔵ノ事故ニ、必々人ニ語ルベカラズ、
(中略)
總ジテノ飾ハ、座席ヨリノ寸尺ヲ極ムルコトナリ、
假令バ疊ノ目幾ツ目ノ處ニ水指、幾ツ目ノ處ニ、小板、何寸ノ處ニ何ト、極メテユクコトナリ、
長板ハ夫トハアチラコチラニシテ、道具ノ寸ヲ極メテ、例令バ風爐ノ前後一寸九分ナラバ、脇ノ明キモ亦一寸九分ニシテ、中ハカマハズ、
水指モ前後ノ中ニ居テ、其後前ノ明キノ寸ホド、長板ノハタヲ明ル、是モ中ハカマハズ、
尤モ水指ニハヨレドモ、先ヅ大抵是ニテハ、中ガ明キ過ルヤウニ見ユレドモ、夫ガ好シ、

長板の置き合わせは普通の風炉とは違う。人に言うなよ、絶対言うなよ。


一般に置き合わせってのは畳上での位置を確定させる事なんだ。
畳の目の幾つ目に水指を置いて…みたいな感じで。

でも長板はそれと逆。道具の寸法をベースに、長板の中心に置いて前後の空きを見る。で、その空きと同じだけ端もあけるんだ。

中の方は気にしなくていいから。なんか間が抜けてるなーって感じになるかもしれない。だがそれがいい


って感じ?

さて。

南方録のカネワリは、道具を中心線で見る考え方である。
畳を5分割(あるいは11分割)し、そこに道具を配置する。
いわば芯芯寸法。
道具の大きさが多少変わっても、中心線だけ意識すればよい。
道具が極端に大きい場合、中心線だけで考えると道具がぶつかりかねないが、まさかそんな無茶な道具は想定していないのだろう。


近衛さんの言う「普通の風炉の置き合わせ」は、道具を座標で配置する方法である。
道具の大きさに関係なく、畳縁からの位置で置く。
道具の大きさが極端に違わないなら、非常に判りやすい方法論である。
ただし道具の大きさが極端に小さくなるなどしたら、この方法ではバランスが悪くなる。


で、近衛さんの言う長板の場合。
道具の前後の大きさから余白を計算し、両端の空きを調節する、という方法。
なんでこういう方法かと言うと、多分、長板の上には「畳の目」というインデックスが適用しにくいからなんだろう。
そして、長板に乗る道具は必ず長板の奥行きより小さい筈なので、これが成立しなくなる状況は「ほとんど」存在しない。

成立しない状況としては極端に横長の道具があったら、成立しなくなる、筈。

…まぁありえねーか。