細川護貞座談2 官窯の美、民窯の美

細川護貞も陶芸をしていて個展もしていた。
…息子さんは父上の道をなぞっているのね。

おもしろいことがありましてね、私が焼き物を作って展覧会をしたことがある。
そのとき浜田庄司さんがみえて非常に熱心に見て行かれ、帰りがけに「非常にいい、今後も一所懸命作ってくれ」と言われたんです。その時はじめて話したんだが、わたしも感激しました。
浜田さんは次も必ずくるからと言われたので、二回目の展覧会の前に、推薦の辞をお願いしたら喜んで書きますということだったんです。
そしたら会期近くになって断ってこられた。
仕方がないのでほかの人に頼んだのですが、どうしうことですかと聞いたら、全く面目ないけれども私の立場は民芸家ということになっている。
細川さんが作っておられるものはみな官窯的なものだ。それをほめるとなると私の立場がないと。

やっぱりドグマなんだよな、民芸運動

「市井の無名の陶芸家にもいい作品はある」ということは「有名陶芸家の作品はダメだ」という事は意味しないはず。いい作品に作家は関係ない、という思想だったはずなのにね。

庄司さんは私の下にはたくさん民芸的な立場の人がくっついている、まことにすまないが了承してくれ、とこうだったんです。
ずいぶん窮屈なんです。
浜田さんのご自宅にお伺いすると、官窯的なものをたくさん集めていらっしゃる。
官窯の美も十分観賞しておられるはずです。しかし民窯を主張した立場上どうしても推薦文が書けない。
そんなことがあるんですねぇ。私のような野人はいいものなら、どっちでも褒めるんですが。(笑い)

ここまで言われると立場ないんじゃなかろうか?

あと、細川家の人に野人っていわれると、世の下々はなんになるの?って感じなんですが…。