茶道要鑑14 茶碗

夫から間違て居るのは、彼の茶器の古きを賞する點である、
新しい茶碗は土の香があり、漆器は漆の香が脱けぬから、茶の香氣を害ふとあつて、自然古きものを尚ぶのである、

う、あぶない、納得しかけた。

この理屈だと、美的にどうこう関係なく、古ければ余計な香りが抜けてよい茶道具と云うことになりはしないか?

それを只だ時代の古いものと心得、蒔繪の剥げた棗やら、茶碗の縁を見れば、赤黒く茶垢の附着したものを以て喜び、人が賞ると宜い氣になつて、一人子を育てる如うに、手入れを致たから此通り馴れたと、鼻高々としての自慢顔も、可笑いではないか、

美術館にすら茶渋が横一文字に附着した茶碗とかが展示されていて、正直萎える。

手入れが行届かないから垢が附くのであらう、若し云ふが如く手入れが行届て居たならば、茶碗は何時も清潔である筈だ。

そうだそうだ。茶渋の附いた茶碗で和敬「清」寂もないもんだ。