茶道要鑑16 心得のうた
瑞穂流の道歌。
1.薄板は床の眞中へ据へて見て奥へ一寸入れて置くべし
2.懸物をかけて置くには壁はまづ三四分すかし置くものぞかし
3.盆景を飾りし時は山水の掛物などは差合と知れ
4.花入の折釘うつは敷居より指尺六つあけて打つべし
5.小室の壁腰張高く張て置け衣類すれると客に氣の毒
6.茶の室へは必ず羽織脱で入れ裾を踏ではこけて状なし
7.踏出すは兎角下方を先きにして縁と敷居は跨えて行け
8.爐の時は炭斗ふくべ柄の火箸風爐は菜籠金属火箸なり
9.炭継ぐは五徳はさむな縁切るな十字を避て釣合を見よ
10.すみつぐは毬打をついで其次は枝管添の順を忘るな
11.塗香合白檀たくは風爐のとき、爐には煉香陶器香合
12.客になり炭の所望をうけたれば薫物一切たくものでなし
13.棚に杓かざるは塗は俯向けて木地は何れも仰向けて置け
14.水指や棚に茶巾を置く時は塗は一度に木地は二度拭け
15.水さしに手桶使へば手は横に釣瓶は竪に置くものぞかし
16.おてまへに杓立使ふ其時は杓を引ての一禮はなし
17.筒茶碗深き底より拭き上り二た度内へ手をやらぬもの
18.濃茶には湯かげん熱く服は宜く泡なきやうに固りもなく
19.何にても道具扱ふたび毎に取る手は輕く置く手重かれ
20.道具持つ手は右なれば眼も右に心はいつも左とぞしれ
21.開け行くみ世の燈光のあるものを暗き短綮は時代後れぞ
22.人に花贈るは花のつぼみなり開き過ぎしは心せよかし
23.水と湯と茶筅茶巾に箸柄杓よりも心を新しくせよ
24.一筋に古きことをば慕ふなよ新陳代謝は世の倣ひなり
25.お茶よりも心を進る心持てたとへ道具は揃わぬとっても
26.客なれば主の勞を省くやう主は客をよくぞ待遇せ
27.荘喫と月の點方は茶筅より茶巾を先きに出すものぞかし
28.野點には花の手まへと荘喫は掛子使わぬものとこそしれ
1,5,6,7,10,13,14,16,21,24,26,27,28は利休百首にないもの。特に21,24は明らかに著者の創作。
4は利休百首が三尺三寸五分なのに対し、六尺になってしまうのが微妙な違い?
利休百首の「ならいつつ」「恥を捨て」みたいなメジャーな句が採用されていないのが面白いね。