茶道の實際4 茶道具

點茶に用ひる種々の道具は其れ/゛\の目的に随つて實用になれば宜いわけであるが茶道の目的が單に茶を點てる事にあるのではないから實用にさへなれば其れでいいと云ふ譯にはいかなうなる。
茲に茶人の審美眼によつて點茶に適當と思はれる諸種の器物が選まれる事になる、
此れは單に美術工藝品と云はれる範囲に止まらず所謂下手物と呼ばれる民藝品から自作の品々又は他の目的に作られた品の轉用等實に取捨選擇されているのである。
要するに實用に供して支障無く且つ何等かの雅味を見出し得るものが茶具として使用される範囲になる、此等の内から更に點茶法から一層便利に且つ他と調和するものが選まれ使用される事になるのである。

茶道具は、単に審美眼だけでなく、実用面もきっちり考えたものが選び抜かれて来た、という著者の主張は納得の行くものだ。

特に、雅味が先に来て、次に使いやすさが来るのがリアル。
雅味を優先して、点てにくさを気にしない事もあるって事だよね。

今日民藝品の雅致が鼓吹されてきた為めに茶道に採用したのではなく茶道者は昔から其雅味を發見使用したのであるが其使用にも場所と時を考へ今日の様に無茶苦茶に所かまはず用ひる事はないのである。

終戦直後はまだ民芸運動に力があったのだろう。
そしてかなりアレな取り合わせが行われていたのかも知れない。

…著者の苦々しい気分が実によくわかる文章である。