近世茶道史11 豪商の茶
第四章「幕末の茶道」。
第1節では「豪商の茶」を扱う。
ここでは金沢の豪商 銭屋五兵衛の茶道具購入を、その日記『年々留』から検証している。
この『年々留』に、茶道具に関する記載がはじめてあらわれるのは、文政十一年(一八二八)三月、五兵衛五十六歳の折のことである。
(中略)
この文政十一年三月の購入品は、必ずしも茶道具としてハイレベルのものではないし、また一貫性のみられるものでもない。
(中略)
その後、天保十二年頃までに多数の茶道具を所持することになるが、質も向上し、出入りの道具商にも変化がみえてくる。
(中略)
このように、年々多くの茶道具を入手し、年ごとにその内容も重みを加えていったのだが、五兵衛自体はわび茶に心を寄せていったようだ。
後年になるほど、千家関係の、たとえば、六閑斎、一燈、不見斎などにゆかりの茶碗、掛物などが目につくようになるし、
(後略)
- 茶道具を投機目的で適当に求める
- だんだんいい道具が判って来る
- いい道具商を探す。
- 京都の道具商と懇意になる
- 千家とお近付きになる
みたいな道が判って面白い。
天保年間の一燈はたかだか50〜60年前の人物。それを投機目的の大金持ちが求める、というのは、商品として価値があったって意味。
幕末頃すでに千家の道具が珍重されていたというのが判るのが面白い。