新選茶の湯読本3 放下着

茶道を学んでまだ日の淺い人が大徳寺和尚筆の「放下着」の三字が書かれた横物の軸を所持していたが、讀み方もわからないし、又、何時ごろ床に掛けてよいかもわからないので、お茶の先生に聞いてみた。
その先生は「放下着」とそのまま續けて讀むから意味がわからないので、返り点を打つと「下着を放つ」と讀める。
即ち綿入の重ね着をしていたのが、段々暖くなってきたので、下着を放つ、即ち下着を脱ぐ、と云う意味であるから、春の彼岸頃に床に掛ければよい。と答えた。
つくり話のようだが、これは実話なのである。

家元の弟、という立場ではしにくそうな下世話な話がさらりとできてしまう、井口海仙大好き。