茶道支那行脚6 日本の茶房
著者の語る日本の茶房の特徴がなかなか面白いので全量引用。
一、几帳面で一種の垢抜けのした氣持が全體を支配してゐる。
二、形に囚はれたと云ふ氣持が抜けきつて居らぬ。無意識的にでもその感じが伴つて來る。
三、飾り付けや、道具が主ではないがしかし、いくら何と云つてもそれが主なやうな習慣になつてゐる。
四、有閑階級のものに限つたわけではないのではあるが、その感じが伴ひ、大衆一般化せんとする氣分が少ない。金澤、名古屋地方のやうなところは、他に多くない。従つて茶席が一般化するところまでには至つてゐない。
五、腰をかけて頂く式は京阪地方にはあるが、東京その他一般にはない。これが著しく支那とちがつてゐるところである。
六、茶の湯を形式とか、資格とか、云ふ方へ結付ける習慣のあるため、朗らかな自由な氣分が伴はぬ傾がある。
七、本當の面目のある處まで打開し、正しく新らしく指導して行くものが出なくてはならぬと云ふ考えが切實に起る。
八、茶器お道具の自慢ばかりすることがやまるやうになつてほしい。従つてその席でのみほめちぎる惡習慣のやまるやうになつてほしい。
かやうな諸點が日本の茶席から改まつて來るとよほど島國式の茶道は改良せられることとなるであらう。
一〜四と六は、本音と建前みたいな話で、どれも未だに解消されていない問題なのが面白い。
五は、立礼が関東には普及していなかった事を示していて興味深い。
七は、昔から「利休に帰れ」みたいな事を言っていたことと併せると趣き深い。
八。そりゃーあんたの願望だっての!
でも、なかなか含蓄深くない?そして70年経ってもほとんど事態に変わりがないってことも。