正倉院ぎれ4 正倉院ぎれの出現とその背景

法隆寺裂より新しい正倉院裂の特徴は以下の通り。

まず織りかたでは、法隆寺系幡類の錦・綾はすべて経錦と平地綾だったのが、正倉院ぎれでは新らたに緯錦と綾地綾文綾が加わり、しかもそれらが量的に前者を圧倒するようになってくる。
(中略)
つぎに文染では、正倉院ぎれの時代になって新らしく現れてきたものに、夾纈染と暈繝染がある。
(中略)
文様のほうでは、前代の幾何学系文様と西方式文様に対し、正倉院ぎれではあたらしく唐花文様が主流になってきた。
(中略)
要約すれば正倉院ぎれは、唐代のあたらしい流行を盛りこんでいるところに、法隆寺系幡類との大きいちがいがあるといえよう。

より技巧的になり、唐の文化の影響を受けている、という。

私の印象だと、正倉院模様=ペルシャ絨毯みたいな奴…という感じだが、それはあくまでお茶の側から見た勝手な話だったらしい。

ところがここに一つの問題がある。
それは、このような新流行にあふれた正倉院の高級染織品が、はたしてほんとうにわが国で作られたのだろうかという疑問である。

しかし、顕微鏡的な観察では、舶来か国産かの区別はつかないという。
そこで、以下の「常識的な」判断で判定している…らしい。

すなわち、かりにある一種類の文様をとりあげた場合─

○それと同じ文様のきれが非常にたくさん残っている
○また文様が同じで配色のちがうものが幾種類もある
○文様に織りくずれや染めのまちがいがあったり、用糸にフシや太細のムラが多くて、製品としてあまり上出来ではない。

ようなものはだいたい国産(つまり、海をこえてわざわざ舶載するのに、同じ文様のものを大量にはもってこないだろうし、出来の悪いのはえらばないだろう、という観点から)、その反対に

○ある文様またはある技法のきれが、ぼう大な正倉院ぎれ中にもごく少ししかない
○しかも技術的にもミスがなく、きわだって優秀である
○それと類似の作品が正倉院ぎれ中にはないのに、中国では発見されている

などの条件にあるものは、おおむね輸入品だろう──、という図式である。

なるほど。
遣唐使の成功率考えたら、同じ柄の色違いとかアホらし過ぎる。
でも出来の方はどうだろう。日本の国力不足で予算が確保できず、粗悪品を買って帰って来たという可能性もないわけじゃないのでは?

さてこの線にそって眺めてみると、結果はどうだろうか。
(中略)
ほとんどが国産の条件の入ってしまうのである。

むぅ。

今の感覚では柄おんなじで色違いがいっぱいあって縫製とかの品質悪い方が中国製って感じだよな。隔世の感である(当り前だけど)。