淡路屋舟

野村美術館にある淡路屋舟の花入。

今井宗薫から伊達正宗宛の添え状が付いていて、「南坊ト申老僧所持仕候」と南坊宗啓の実在を示す資料となっているという。

この書状の真贋が判定されているかどうかは知らない。
しかし、もし真だった場合、疑問が出る。


淡路屋舟の伝来は「淡路屋宗和・南坊・理蔵主・伊達正宗…」になっている。

南方録の滅後に南坊宗啓の所持道具が書いてあり、そこには確かに「舟花入」がある。しかしこれは「(侘び茶人の私のささやかな道具のうち、)山岡宗無より貰ったもの」である。

名物花入「貨狄」に匹敵する釣舟花入と、侘び茶人の持つ舟花入とは同じものだろうか?
南坊宗啓の茶風に名物釣花入はそぐわないと思うのだが。


あと、山上宗二記にもまったく記述がないのも気になる。山岡宗無より貰った舟花入は利休の生前からの所持なので、(南坊宗啓が実在していたら)山上宗二が見ていないとは思えない。


淡路屋舟は大正五年の伊達家売立で3万3千5百円という高値で落札された。

値をつり上げる為に南坊に仮託した添え状が付けられたっておかしいとは思わないぜ。