寸松庵色紙の習い方4 上下句分割の散し書

さて現存の寸松庵色紙を見ると、三十枚中(田中氏模本中に載せられたる數)一首の歌を一團として散したるもの二十六枚、上下二句を分かち二團とせるもの四枚といふ割合を以て書かれてある。

寸松庵色紙の散らし書きのうち、上の句と下の句が分割される程大きく散らされたものはうち4枚。
その4枚のレイアウトの分析である。

上の句を五行又は四行に分割して書き進めて居るが行頭は次第下がりとなり行尾は大體揃つて居る。
これを以てなされて居る形を見れば左圖の如く右下に直角を有する三角形となる。

上の句は料紙右下に直角三角形に配置。

上の句が紙面の右下にかくも儼然と占めた以上は下の句はこれに對しての考慮を拂はねばならぬ。
抑々天に二日なきが如く同一紙面に二つの主體のあることは許されない。
(中略)
下の句は當然副たる位置に居らしめなければならぬ。

上の句が安定した配置になっている以上下の句は副たる位置に配置されると言う。

さて上の句を主とし下の句を副とする二社の對象を以てこの散しは形成されてゐるのではあるが、副たる下の句は右に示した通り菱形、しかも不等邊四邊形の外郭を無し、あたかも壽老人の頭の如く頭部の長大を計り、脚部を縮めて稍右に傾いている。
この傾きが妙趣のやうである。

下の句は料紙左側中央に下が短い菱形(涙滴型)に配置される。

たしかに「ふみわけて」の句とかはそうなっていて味がある。


散らし書きは適当かつ勝手に書き散らしたものだと思っていたので、法則性が有る、という発想すらなかった。
思ったよりフリーダムなものじゃなかったのかもしれない。