茶杓をつくる3 煤落とし

煤竹は百年も二百年も煙でいぶされ、まことに汚れたいぶし竹になっているので、筒も茶杓も、この煤を洗い落さなければ用には立たない。
ところがこの煤落としが、私にはたいへんむずかしかった。

私も煤竹もらったことはあるが、ティッシュで拭くだけだったなぁ。
試行錯誤が足りなかったかも。

はじめ私は大鍋を買ってきて筒と茶杓竹をグラグラ煮てみた。すると煤はきれいに落ちたが、縄目の鮮やかな文様がだめになってしまった。
そこでこんどは水に浸し、何日もしてから洗ってみたが、それでも何百年といぶった煤はなかなか落ちなかった。
(中略)
三日目に水から煤竹を取り出し、古タオルの表面に籾がらをいっぱいつけて、おそるおそる大事に磨いた。
(中略)
ところが、それが次第に乾いていくにしたがって、そのきれいな肌に細かな傷がいっぱい白くついているのが見えてきた。
(中略)
するとこの名匠は、私を仕事場へ入れてくれて、煤落としを実演して見せてくれたのである。ガスのブンゼン灯で、汚れた竹をあぶり、焦げんばかりに十分あぶると、どんな古い煤竹でも、いわゆる竹の油がジーッとにじみ出てくる。
そこをすかさず拭き取ると、煤はこの通りきれいに取れる、とまことに手際よくそれは短時間で美しくなり、籾がら法、熱湯法、水浸法など、いろいろ試みたあとだけに、これはなるほど、と感にたえなかった。

煤はたいてい炭と油の混合物なので、煮沸で落とす事ができる。縄目が消える理由は判らない。
物理的に削り落としたら、傷だらけになって当然。

あぶって油出しして浮かしてぬぐう、という手法は面白い。青竹から白竹を作る際、あぶって油を出すが、その手法が枯れきった煤竹で使えるとは思わなかった。

気軽に試せるほど、取り立て?の煤竹が手に入らないのが玉に瑕。


しかし、80歳にもなって、自分の過去失敗して来た手順を覚えていて、しかもそれを公開するってのはすごいね。