茶杓をつくる2 竹取りの翁

茶杓作りには、何よりもまず、よい竹を手に入れることが第一である。
もう二十年近く前のことになるが、わざわざ東京から新幹線に乗って但馬の山奥の寺に煤竹をもらいに行ったことがある。
(ざっくり中略)
東京高師時代の同級生である丹波園部の高校長・井口尚輔君から電話で、丹波の山の中の古い家を取り壊すから煤竹が手に入るかもしれん、といってきた。
(ざっくり中略)
五月の終わりごろ、また京都の井口尚輔君から突然電話がかかった。

実際問題茶杓作りの肝は、曲げでも削りでもなく、竹の入手である。
良い竹なくしていい茶杓はできない。つーか、どう削っても凡庸な竹からは凡庸な茶杓しかできない。

ただ曲げるだけでなく、良い茶杓を作ろうとしてたら5000本も竹を曲げてしまった…というのだから、竹の入手のプロセス自体無茶苦茶である。

著者は自分を竹取りの翁になぞらえているのだが、この翁には煤竹が蓬莱の玉の枝なんぞより宝物だったんだろうな、と思うのだった。