利休を巡る色々2 参内と昇殿
まず居士号を考えるにおいて、その前提である「無位無冠だから参内できない」という前提が本当か考えてみたい。
まず、参内と昇殿の違いについて考える。
昇殿は、天皇の政治場所である清涼殿へ上る、ということ。
参内は単に御所に行く事から昇殿までを含む概念。
昇殿は五位(+六位蔵人)以上の位を持たないとできない。いわゆる殿上人の世界である。
しかし禁中茶会は小御所で行われた。つまり昇殿は関係ない。
では広い意味での参内にどういう資格が必要か。これが実はよく判らないのだ。
江戸時代には春日局参内事件というのがある。将軍の乳母で無位無冠のお福が後水尾天皇に会いにいった事件だが、「参内事件」と名はついているものの、昇殿の話と言うのが適切だろう。
同じ江戸時代、中御門天皇が江戸に移動中の象を見たいが為に、象に臨時に「広南従四位白象」を与えた例がある。しかし従四位という、大名以上の位を与えたこれは昇殿として扱っていた可能性がある。
枕草子には「命婦のおとど」という猫の話がある。五位を貰って昇殿して帝にかわいがられた猫の話である。これも昇殿の話で参考にならない。
ちなみに兼見卿記には禁中茶会の前々月、小御所に下見に来た「宗易」の事が記されている。
御所に入るだけなら無位無冠でも良かったのは確実であろう。
禁中茶会で利休は小御所の端の座敷で公家相手に台子茶を点てていたのであって、正親町天皇にお茶を点てたわけではない。
本当に「無位無冠だから参内できない」という話、根拠あるのだろうか?