茶会記の風景

谷晃/河原書店/1995年。

谷晃は現代の茶道研究家として、熊倉功夫二大巨頭である、と思う。
熊倉功夫はいろいろ監修するばっかで本人あんまり何も考えていない気がするし、そもそも茶の湯を愛していないんじゃないかとも思える。
それに対し谷晃からはあふれでる茶の湯愛が伝わって来るし、古典をこよなく愛しているのもよくわかる。惜しむらくはあんまり話の持っていき方の面白い人じゃないというところか。


本書はさまざまな茶会記からその時代の茶の湯を浮き彫りにしようとしている。

最初は津田宗及。

まずは信長の名物狩りに関して。

それから四年後、天正二年(一五七四)の十二月も押し迫った二十日の昼、今井宗久が一人で宗及を訪ねてきた。
茶会の形をとってはいるが、目的は明らかに“談合”である。
宗久が言うには、信長が住吉屋宗無の持っている松本茶碗を、是非にも手に入れた
いといって、すでに朱印状を下し、家臣の菅屋玖右衛門がそれを預っているという。
(略)
そして明くる二十四日には、銭屋宗訥の家において、宗訥・利休・宗及と天王寺屋道叱の四人が相談をめぐらした。

天王寺屋会記自会記・他会記の該当部分を読んでも、一行くらいの記述で、相客しかわからない様な会から、そこまで読み取ってしまうのはすごいのか妄想力なのか…。

この後、話は宗及と明智光秀との関係になるが、これも自会記の相客からの類推である。

…。

…惜しいなぁ。


津田宗達と津田宗及。台子の茶と小間の茶。

天王寺屋会記から茶の湯の革命期を考証することもできたかもしんないのに…。

…まぁ相客は大事ではあるけど。