茶室の話13 茶室の八炉説

建築主から炉を切ることを求められると,若い建築家はまず茶室の本を見て炉の切り方を学び,そのうちから自分の設計した室に当てはまる炉の切り方を採用するだろう.
ところが,茶室の本のなかで,炉の切り方を解説したものには,必ずといっていい程茶室八炉の説をあげてある.
(略)
これらを見ると,八炉の表現はみな同格に扱ってあり「この8つのうち,いずれかに決定される」と解説してある.
若い建築家はこのうちのどれを採用してもよいと判断し,逆勝手の4帖半切りや,逆勝手の台目切りを採りあげて,本稿の49図や55図や58図のようなものを書いたり作ったりする.
罪はこれらの解説の不十分さにあるといわねばならぬ.

よく入門書にある「八炉」の図は、よろしくないと著者は言う。

この八炉は昔にはなく,近頃になって唱えだされたもので,前記の本は無反省にとり入れ,繰りかえしこれを書いている.
かく言う筆者もこの八炉説にまどわされたことがあったが,数多くの古今の茶室を調べているうちに,
逆勝手の4帖半切りは利休の初期にはあったが,その後期からは絶えてなく(みな本勝手4帖半になる),さらに逆勝手の台目切りと逆勝手の隅切りは皆無にひとしく、ただ逆勝手の向切りだけが昔にもあり,今でも作られていることが判った.

そこで八炉は五炉(本勝手の4帖半切り,台目切り,向切り,隅切りと逆勝手の向切り)であることを説いてきた.

つまり、順列組合せで8通りあっても、

  1. 逆勝手の四畳半切り
  2. 逆勝手の台目切り
  3. 逆勝手の隅切り

は、現代ではやらない、という事。


逆勝手の四畳半切りを作るくらいなら、曲がり茶道口の本勝手の炉が切れる。


逆勝手の台目切りに関しては、不審庵は戻り茶道口にしてでも本勝手を維持している様に見える。

隅切りは炉なのに風炉の点前みたいになるところが面白いのだが、逆勝手にしては普通に炉が遠くにあるばかりでつまらない。


なるほど、わざわざ作る程の価値はなさそうだ。