茶室の話15 炉の切り方

建築家としての、著者の炉の切り方の原則。

1.著者の五炉のうちから選ぶこと.くれぐれも,逆勝手の4帖半切り(略して半切り)や,台目切りや,隅切りには手を出さぬこと.

これは先述の通り。

2.本勝手の半切りと台目切りは,作られる全茶室の約80%で多い.向切りは少なく,隅切りと逆勝手の向切りはさらに少ない.

四畳半切りか台目切りにしとけ、という事。
五炉といっても、やっぱ中心はこの二つ。

3.半切りは4帖半およびそれ以上の広間に適し,とくに6帖,8帖などには半切りに限る.

広間は四畳半切り。

4.台目切り,向切り,隅切りは小間に適し,とくに隅切りは2帖いかに適する.昔から「二帖隅炉,三帖向切り」の語がある.

「二帖隅炉,三帖向切り」の語の出典はなんであろうか?意味は判るが。

5.逆勝手の向切りは,逆勝手の変わった趣向を楽しむもので,とくに要求のあった時以外は作らないこと.設計者が独断で採用すると後で文句が出る.

施主に独断で炉の決め方を決める…なんてことがあるんだろうか?

施主がよくお茶をしらない(公民館など)が、あとでユーザが使いづらいと文句を言うことならばありそうだ。

6.逆勝手の向切りや,同台目切り,同隅切りは,作っても通用しない.
茶室の本のうちには,前掲の6つのほかにも立派な本がある.
しかしいずれも炉の切り方に触れていないから論外とするが,唯一つ八炉説を打ち消したものがある.それは図説茶道体系第4巻「茶の建築と庭」の中で,伊藤延男氏が逆勝手の席を否定して,「遺構を見ても逆勝手はほとんど発見されていない.まして古くは左勝手(今の本勝手)という考え方に統一されていたのであるから,逆勝手の生ずる余地はない」と書かれている.
本勝手だけの四炉説である.

「まして古くは左勝手」の根拠はおそらく山上宗二記であろう。

紹鴎カヽリハ北向右勝手、
(略)
引拙南向右勝手、宗達モ右勝手、道陳ハ東向右勝手
(略)
宗易ハ南向左勝手ヲスク、當時ハ右勝手ヲ不用也、

昔の茶人は右勝手多かったが、宗易以降左勝手になって、右勝手は使わない、とある。


茶室、というのは使うものである。その時代その時代に必要な改修が行われ、行われないなら解体され別の建物に置き替えられてしまう運命にある。


だから、文献上はそれなりに有ったはずの逆勝手の茶室があまり残っていないのは当然だと思う。