織田信長最後の茶会

小島毅/光文社/2009年。

本能寺の変の謎を探る本である。

  1. 信長や室町時代に関して、司馬遼のおかげもあってさまざまな先入観がある。
  2. 古くは公家や坊主の陰謀論は認められてこなかった。
  3. 織田家の政権ももしかして中国の冊封体制の一環かもよ?

みたいな結構スリリングで面白い内容ではある。

問題はタイトルの「お茶会」に関しての言及はほとんどないことか。

六月一日、堺からほど遠からぬ京都の本能寺では、信長が安土秘蔵の名物茶器をそろえて大茶会を催していた。
なぜん信長は家康をもう一度京へ呼び戻して、彼にも公家たちと一緒に自慢の茶器を見せてやらなかったのか。

敵とは、そこにある名物道具だったのかもしれない。
これらをすべて獲得できれば、その威信財的価値は計り知れない。
信長の御殿が炎上したのは、信長の指示であって光秀の意思ではない。
光秀は最も欲しかったものを入手しそこなったとは考えられないだろうか。

「一国一城にも勝る」茶器を手にするための反乱…という思想は面白いと言えば面白いが、著者自身がそれを主原因と考えてなさそうなので、このタイトルと内容の乖離はどうなんだろうか…。