茶事談2 本朝茶祖珠光傳1 珠光爆誕

本書には珠光の伝記が載っている。
…というか、それがこの本のメインテーマというか。

すっごく長いので注釈除き、何日かにわけて引用する。

まずはその誕生から。

往昔和州南都中ノ御門ト言所ニ村田木工市検校ト言者アリ

珠光の父は村田杢市検校と言われるが、本書では杢ではなく、木工と書かれている。
わざわざ木ユと二文字に分けてあるので、それに従った。

一人ノ男子アリ童名茂吉トイフ
茂吉十一歳ノ時同所北市ノ邑稱名寺ニ入テ出家トナリ珠光ト号ス
十八歳ノ時稱名寺ノ中法林庵ニ住ス
珠光二十歳ノコロヨリ出家ヲ厭唯俗業ヲ好ミ寺役ヲ怠ル
師コレヲ責諌レ共用ヒズ
終ニ師ト両親トノ勘気ヲ受法林庵ヲ出テ漂泊ノ身トナル
其後珠光三十歳ノコロ禅僧トナリ京師紫野大徳寺真珠庵ニ住ス

山上宗二は珠光に関し、「30年ほど茶をやってる奈良称名寺の僧」としか言っていない。


200年後、彼のプロファイルはこんなにも膨れ上がった。

幼名が判り、出家時期が判り、住居が判り、二十代で怠業で寺から放逐された事が判り、禅に鞍替えし大徳寺に住んだ事が判った。

なぜ情報が増えるのか…。


ずいぶんとロックな人生にされてしまった珠光。
茶の湯の祖珠光と大徳寺を結びつけるための作為なのだろう。

でも、これ私の感覚では珠光を奈良称名寺の僧と紹介できないのだが。


珠光の伝記が時代につれどう成長変形して行ったか、というのはなかなか大変かつ面白いテーマだと思う。