講座日本茶の湯全史19 元禄時代の茶の湯

木塚久仁子著。

元禄ほどさまざまな言葉に付属して生き続けている元号はないだろう。

ってことで元禄の茶の湯文化について。

多数の著作がある遠藤元閑(生没年不詳)は名を鳩、広長軒・敬休と号し洛陽隠士と称した。
(略)
元閑の茶書が膨大であるのは、それまでの茶書がなしえなかった茶の湯の作為をかたちとして版行したからである。つまり、炭の置き方や茶花の活けた姿を具体的に図示したからであり、茶の湯の大衆化にともなう固定化・形式化とでもいうべき流れが背景にあると考えられている。

エピソード集や心得えの本は過去からあったけれど、ここに至ってはじめてお点前の可視化が始まった、ということなのね。

そして豪商たちの遺言などから絢爛たる茶の湯があったこと。それに反発する、太宰春台など儒者、藪内竹心など茶人の茶の湯批判が語られる。


茶ノ本道廃ルベシと書いた南方録。利休時代の茶の湯を伝えた茶話指月集、宗旦の茶をある意味伝えた山田宗偏の茶書も、そういった流れの中で出てきたことを考えると、この時代に茶の湯自体が大きく変貌してしまったということなのかもしれない。

そうであれば、本当の利休の茶の湯なんて失伝してしまっていて、空想上理念上の存在かもしれないんだよなぁ。