詩集利休

斎藤潔/赤門書房/1943年。

戦局厳しい昭和18年に出た、たぶん最初で、もしかしたら最後の、茶の湯の詩集。

詩集利休敍

夕月夜すこしある茶はかせの心法澄み極まり、
美の業つひに造りぬる永祿天正の昔おもへば、
近く異邦的三代に生き來しわれらの、
慕はるる古里を月日隔てて訪るる如く、
はた、知らぬ他郷に心牽かるる貴てなるもの見出てしほめき頻りにして、
朝の侘夕の寂すずろありとやとつつめければ、
八重葎おどろが下の草庵に春しぐれ微し下りて、人肯く肯く

昭和十八年五月十五日 黄眠道人

黄眠道人は日夏耿之介
斎藤潔は日夏に師事していたらしい。

日夏の美辞麗句が、厳しい戦局からの現実逃避としか思えないのが実に悲しい。

茶の湯の逃避は、豊かな喧騒からの逃避であってほしかった。

何に手を出してしまったのだろう?という気持ちはあるが、明日からちょこちょこっと、詩集の感想を。