詩集利休7 小堀遠州

小堀遠州


雲に飛ぶ 鶴の崇さ
翔跡は見事な宮殿楼臺を 描いてくれた
夜半の目覺めの蟋蟀
林泉影 林泉影とすだいてゐた


木靈の精が
通ひ小町のやうに 訪ひ來る
解脱のために
意華匠嚴の工經を 誦して貰はむが為に


この人は 足掻きせわしいはやり駒を
光藏の方寸の中に整正する


石燈籠が在る
石がある 水がある
木がある 草がある
その庭に 心が在る
庭は心に似てゐる
庭は心だ


けふも意匠の風が吹く
眞冬でも 黄草裡でも
花曇りの日の風のやうだ
夢を引き出してくれる風の手
遠州は獨酔つてゐる
醇■(酉+禽。読みは「り」)も飲せないのに酔つてゐる
豊々と怡々と 沈々と 酔つてゐる

「雲に飛ぶ」の連。
コオロギの声「林泉影」の林泉は庭のこと。
著者のイメージは造園家ということになる。

戦前のイメージとしては遠州はやはり造園である。
茶人としては利休があまりに強く、遠州の強みは造園ってことになったのだろうか。