奈良大和路茶の湯逍遙

神津朝夫/淡交社/2015年。

奈良近辺の、茶の湯史跡を紹介する本。
研究書ではない。ガイドブック、というわけでもない。
エッセイというかなんというか、ふらふらした感じの本。だから「逍遙」なんだろう。


平城京と茶」より。

奈良時代はちょうど唐で陸羽が世界最初の茶の百科事典といわれる『茶経』を書いた時代にあたる。
(略)
さて、このような中国の喫茶の習慣はいつ日本に伝わったのだろうか。
(略)
その釜が、奈良興福寺一乗院跡からも発掘されている。
(略)
日本への茶の伝来が少なくとも八世紀末まではさかのぼる可能性が、あらためて浮かび上がってきた。

陸羽の人生が八世紀とぴったり重なるわけだから、ほぼリアルタイムで中国の流行を受容していたということか。

遣唐使もあったわけだし、当時の日本がどんだけ舶来文化にメロメロだったかよくわかる。

この流れは宋の時代も続き、日本は禅と抹茶の流行に流されるわけだけど、宋が滅んでモンゴルが制覇すると、舶来文化追随が弱くなる。

もし漢民族王朝が継続していたら、僕等は抹茶で茶の湯をしていなかったかもしれない。