喫茶南坊録註解18 袋棚

南坊録の「棚」より、袋棚の

袋棚ヲ拵へたる是紹鴎に始ル。
此後置棚あまた出来候得共、袋棚に過たる棚なく、カネ萬調ひて臺子弓臺にもおとらぬ棚なり

この部分の注釈。

カネ萬調ヒトハ最モ完全ナル者トノ意ニテ、袋棚ハ京間、田舎間何レノ畳ニモ調和ヲ得、之レヲ五ツ矩、七ツ矩何レニ用フルモ些ノ遺憾ナキ所ノ者ナリ。
故ニ紹鴎ハ之レヲ愛用シ、利休ハ之レヲ称讃セリ。

たぶん「カネ」という言葉の拡大解釈。

原著では「バランスいいよ」ぐらいの意味を、著者は「いろんな畳の上で曲尺割を実現できる」と捉えてしまったのでは。

そもそも利休の頃にわざわざ田舎間で茶室を作る理由がない。

後の時代の感覚で過去を捉えた弊害である。

もっとも;

袋棚ハ書院鎖の間、平座敷、小座敷共に用ゆ、書院には凡うすぬりよし

と南坊録にもあるので、南坊録の著者も、利休時代に鎖の間が一般的だったと思い込んでいたと思われる。

陥りやすいポイントではあるようだ。


追記。

南坊録の滅後に、

袋棚ノ置方(略)
休云、紹鴎ノ四疊半ハイナカ間ニテアリシナリ。

とあるので、それを受けてのこの記述だった模様。


そういう意味では私の誤読。

でも、やっぱ南坊録著者の誤認と思う。
室町期に紹鴎がわざわざ田舎間で建築したという理由は思い付かないし。