喫茶南坊録註解21 水指無し
南坊録「墨引」より。
原文;
勿論水指ハ如常アルベキナリ、風炉ニテ水指ナシト云フコトハ努々有間敷也。
風炉の時、水指を置かないような置き合わせはゆめゆめあってはいけないよ、と南坊録の著者は言っている。
それに対する注釈;
風炉ニテ水指ナシト云フコトハ努々有間敷ト 此レ明文アリ、然ルニ本録三(四二)及ビ本巻前方(一八)、又本録九(一三)ニ、何レモ風炉ニ「水指ナシ一ツ物」ト云フコトアリ。
是レ本文ニ努々有間敷ト云フニ矛盾スルニ似タリ。
え?そーゆー実例、南坊録中にもあるじゃん!と著者はいう。
窃ニ惟フニ、普通ハ水指ナシト云フコトハ有ラザルコトニテ、本文ニ云フ所ノ如シ。
臺子切紙、袋棚切紙ヲ見ルモ、大抵水指ナシノ飾ハアラザルナリ。
然レドモ特別異例ノ事トシテハ、水指ナシ一ツ物ト云フコトモ稀ニアルベキナリ。
南坊録の実例を見ても、名物を飾る際、水指を置かずにそこに名物を飾るという極端に珍しい置き方なので、それはそれでありなんじゃね?とも著者は言う。
ではどうお点前するかと言うと、
客座入後水指ヲ運ビ、
と運びになる。
逆に言うと、南坊録では風炉の運び点前を一般的には否定しているわけだ。
私もこれには賛成。
風炉も運び込むので無い限り、水指だけ運んで来ても格好つかないもん。
となると炉も気になるが、著者はすかさず答えを用意してくれている。
人アリ問フテ曰ク、「風炉ニ水指ナシト云フコト有間敷」ト云ヘルヲ見レバ、炉ニハ水指ナシ一ツ物ノ式アリヤト。
之レニ答ヘテ曰ハン、
炉ハ本来侘ノ者ナレバ、或ル時ハ水指ナシニ茶入ノミ飾リ、水指ハ後ニ運ブコトアリ、或ハ水指ナシニ茶入、茶碗ヲ飾ルコト往々アリ、二ノ巻会記中ニモ十一月十二日ニ、茶入尻フクラ、天目薬師堂トテ、倶ニ名物ナル時、水指ナシニ飾レリ。
ただ、これでも名物の飾り限定。
南坊録の著者にとっても、柴山不言にとっても、運び点前は「ほぼ禁止」のお点前だったのだろうか?