喫茶南坊録註解22 口伝
南坊録「滅後」より。
南坊録は、「覚書」から「墨引」までは
- 利休が南坊宗啓に何か教える
- 南坊宗啓がそれを文書にまとめる
- 南坊宗啓がその文書を利休に確認してもらう
- 利休が文書にOKを出す
という体裁を取ってきた。
それに対し、「滅後」は利休死後に南坊宗啓が思い出して文章をまとめたもので、利休の査読を受けていない、という設定である。
だからかなりエッセイ風で、文章の雰囲気も違う。
その滅後の五十三センテンスの原文より:
風炉は一尺四寸座真中ニスエ、鐶附ノ三分一捻リ込ムコトナリ、猶口傳有之、
小座敷ノ土風炉ニ至ルマデ、此本意ニテ捻ルコトナリ、
花入ナドノ耳アルヲ少ヒネルモ此心持ナリ、
順逆ノ座ニ心得口傳アリ、
残念ながらこのあたりは設定が破綻している。
著者も解説には苦労している。
順逆ノ口傳明カナラズ。惟フニ座敷ノ順逆ニ應ジテ捻ル方向ノ差別ヲ云ウコトナランカ。
捻リ込ム口傳亦明カナラズ。捻リ込ム方向ノ角度ガ居住居ノ身構ノ標準トナルコトヲ云フニ非ルカ、総論居住居ノ項参看スベシ。
利休の査読を受けない私的な覚書なのだから「口伝有り」はおかしいのである。
むしろその口伝を記録しておくのが目的な筈なので。
設定の一貫性に綻びがある部分だと思う。