喫茶南坊録註解28 水海

滅後より。

薄茶ノ時運ビ出ス茶碗ノ内、茶巾ノ仕込様ニサラシト云フコトアリ、
是ハ瀬田掃部古キ高麗ノ皿ノ如クナル茶碗所持ス、
湯水ノ取扱ヒ、茶筌スヽギ抔殊ノ外難儀ノ物ナリ、
サレ共餘リニ見事ナル一躰故秘蔵ナリ、
休ニ名ヲ附テ給ハレト申、即水海ト名ツケラルヽ、
指渡ノ寸畳十五目ナリ、
茶杓ヲ削リテ此ノ茶碗ニ添ヘラレヨトテ被送、茶杓ノ名ヲ勢田ト云フ、
此ノ茶碗ニテ夏会ノ時、掃部始メテサラシ茶巾ヲ仕出シタリ、
端縫ナシニテ、仕廻ノ時ニ、天目ノ如ク茶巾サバカレタリ、
秘蔵ト云ヒ、殊ニ休ノ名ヲ附ケ、茶杓迄ソヘラレタル開キ尤モノコトナリ、
サラシ茶巾一段サハヤカニテ休モ感心ナリ
(略)

利休は瀬田掃部のデカい平茶碗に「水海」という名を付け、「勢田」という茶杓を作り、送った。

いい話である。ちょっと出来すぎの上、捻りが足りない気もするが。

んで、掃部は「さらし茶巾」というお点前を考案し、涼やかに夏のお茶を披露した。


著者の解説。

サラシ茶巾ノ様式明カナラズ、
憶度ヲ以テスレバ、方一尺ノ真茶巾ヲ竪ニ長ク四折シ、茶碗ニ茶筌ヲ入レシ上ニ、茶巾ヲ長ク横タヘテ、両端ハ左右ヘ垂レシマシ形ニ非ルカ、
後方(37)トヒ口茶碗ノ項ニ、サラシ茶巾ヲトヒ口ニ仕込シ時、利休曰「口ノサシ出タルサヘ異様ナルニ、又サラシノ端ノ出デタルハサナガラ角ヲハヤシタル様云々」トアレバナリ、尚後考ニ俟ツベシ。

私は、瀬田掃部の「サラシ茶巾」は、単に洗い茶巾の事かと思っていた。

が、どうも違うっぽい。

茶巾を長く畳んで、茶碗に載せて持ち出すお点前。
さばき直しを含んで涼やかなお点前なので、実際には洗い茶巾と同じプロセスを含むと思うが、乾いた茶巾を長く折ることは難しいので、洗い茶巾と違って濡れた茶巾を持ち出すのかもしれない。