茶道規範2 緒言

続いて關嶺宗の緒言。

凡茶道の書世に多しと雖も本編は利休正傳を主とし茶道便蒙抄茶道要録に基きて物したるものなり
然れども両書とも茶法の大體を示したるものにて其微細の節目に至りては口授によりて傳ふるがゆえに其師により區々に分れ甚だ祖翁の精神に悖戻するの慨あり
要するに其據て信ずべき書の少なきが為ならんか

口伝による伝授で、講師間の解釈差が生まれている。
これはいい本が少ないからだ。

往昔前両書の内様詳細に聞記したる書ありき之を參伍校訂して以て六巻とし其第一巻は茶道便蒙抄第二巻は座席諸道具置合せの圖式を示し猶説明を附して器物の位置を明瞭ならしめ第三巻は茶道要録第四巻は前両編の聞書にして第五巻は盆点天目臺子の三式を載せ第六巻は茶席築造法具圖繪其他なり

本書は

1.茶道便蒙抄
2.置き合わせ図解
3.茶道要録
4.茶道便蒙抄聞書
5.盆点台子
6.茶席の作り方

という構成である。

斯の如くして同好の士に頒ち斯道の普及を圖らんとす
世の利休正傳によりて教授し又は學ばんと欲する士は此書に就て研究せらるれば恐らくは轅を北にして楚を望むの過差無からんか
是れ本書を開版する所以の微意也

この書から分ることは、口伝というのにはそれなりに問題がある。特に統制を取りたいときは伝言ゲーム化が大きな障害になる、ということである。

そして、この時代の宗偏流は「書籍を展開する」という方法で解決を図った。

交通と通信が、まだまだ不便だった為だろう。

現代であれば門人組織の階層化とそこでの集合研修で上意下達を図ると思う。

現代ではできることも、大正時代にはまだ無理だったということだろう。