茶道規範11 聞書 茶具置合の事

茶具置合は、中立の間の亭主の話である。
茶道便蒙抄にはこうある。

第十七 置合の事
(略)
一 座敷掃除して道具置合も相濟て。客座入の案内に潜りの戸三つぶせほど明け懸るなり。
客是を見て手水を遣ひ入事なり。
又此時くヾりの戸明けず鉦うつ事あり。是は古織より初るなり。
古織伏見に居住の時數寄屋より腰掛まで程遠き故座敷の仕廻客へ知れざるに付て案内の為に鉦をうたれ候と也。其以後座敷檐下の腰掛にても人毎に鉦を打事不心得

亭主は準備が終わったら躙り口の戸を指三本分開ける。
客は是を見て手水を遣い、座入する。
鉦を打つのは織部が伏見屋敷で腰掛けが遠かったのでした工夫なので、間近に腰掛けがある場合は鉦を打つのは考え違いである。


聞書はこう。

第十七 茶具置合の事
(略)
一 座敷掃除濟み。道具の置合もすみて客座入の案内にくヾりの戸三つぶせ程あけ懸るといふは是古代の法なり。
當時は同輩にても戸を明け下へおりて挨拶あるべし
當世は主客の挨拶慇懃を専らとする事なれば古法なりとて故もなく守るは却て失禮なり能々考ふべし
古代と當代の書翰文言又は殿樣の認めようにても知るべし
貴人の時猶更腰かけの遠近に構はず御迎に出べし
鳴し物は同輩の事なり
潜りの戸を明けず鉦を打つ事(略)

躙り口の戸を指三本分開けて合図にするのは古法である。
今どきは同輩であろうが挨拶に出るのだ。
今の茶の湯は挨拶慇懃になっているので、古法を守ると失礼になる。
昔と今とじゃ偉い人とのやりとりもずっと慇懃になってるでしょ?
貴人の時は遠くてもお迎えに行きなさい。
銅鑼は同輩の時のみね。


茶の湯の変化を認め、明確に古法に逆らっている事が面白い。

あと、鳴り物文化は非常に限定的であり、基本迎えに出る以上、うんこ坐りして鳴り物を聞く事はやはり無かったのではなかろうか?