茶道規範37 聞書 跡見の茶の湯の事

茶道便蒙抄の「跡見」はシンプルである。

一 座敷置合は菓子の茶の湯に懸物と茶入の袋なき物なり。
食物は菓子にても出さず。
扨客行く時分は茶主より案内あるものなり。
但客の住宅茶亭よりも隔り候はヾ近所何方へ來り居候半の間時分御知らせあれと。
兼て茶主へ約束致し置たるがよし

  1. 置合せは中立後なので掛け物なし。茶の後なので袋無し
  2. 供応はせず
  3. 前の客が終わらないと始められないので、亭主から案内が有る。

聞書はその理由を補完してくれる。

一 跡見とは貴人御出の節兼て主巧者か師家などに願置て御立の後に行く事なり。

跡見は達人から貴人に向けたお茶を、事前に願っておいて事後に見せてもらう事だ。

まずは定義から入り、めったやたらとするものでないことをアッピール。

座敷置合は菓子の茶の湯に懸物と茶入の袋なきものなり。
食物は菓子にても出さず。
客の殘り物の如く見えて却て馳走ならざるが故なり。

供応しないのは、残り物っぽく見えちゃうから。

若し茶後ゆる/\咄し居る時は時宜によりて酒吸物にても出すべし。
尤清き菓子ならば是を斷り出しても苦しからず
(略)

でも長話になりそうなら酒や吸い物、菓子ぐらい出してもいっかなー。

…この辺、微妙に大正時代の数寄者への配慮が感じられる。
 
本来、ちゃんとした茶会が二刻行われた跡なのである。跡見が長々行われてはいけないと思う。さくっと見せてさくっと終わりにしたいけど、跡見に来たがる程の熱心な人を邪険にしづらい。 

その辺の配慮が見える気がする。