茶道規範40 聞書 蛭釘

茶道便蒙抄の自在の章にこうある。

一 ひるかぎ打ちやう扨自在くさりの名所不及筆口傳

蛭釘の打ち方は自在、鎖の重要な部分。
書き残せないので口伝とする。

…公刊書で口伝にして、どうするんだろうか?という疑問はある。


さて聞書。

蛭鉤打やうの事。
外爐にても向切にてもかぎの方を下座に向け鉤の脊中正客の方たるべし
爐に向ひ鉤の先亭主の右か左なり
かぎ横ならざれば自在の緒懸け難し
又自在の小さるは柘にて作る鉤は茱萸の木を用ふねばきものなり
鉤の所に枝付を用ふ拵樣恰好緒の付やういづれも定寸法あり

宗旦作の自在宗偏所持なり
小笠原侯の小屋にて茶事の時長きとて上の緒付より宗偏切りて用ゐられしとなり。
其切たる所に旦翁の判あるゆゑ宗偏の嫡久作根付にせられしを宗伯常に見たるよし
此の自在宗圓より松恕へ譲り時時習軒所持す

懸け緒小猿を付るに麻を用ふ又みづきさらし百目ある麻苧を五十目位までにあら櫛
にて梳きすぐりて作る宗圓の傳なり

「不及筆」というほどでもないな。

口伝、などの仰々しいものの枯尾花、である。


聞書は、ローカライズされ混乱していた宗偏流のスタンダードを再構築する試みである。
口伝、などという伝言ゲームが排除されるのは、当然かもしれない。