茶道規範53 要録 茶筅
この本から、江戸時代中初期の茶筅事情がちょっと判る。
一 茶筅*1之事圖アリ
又タ蓬莱流ト云フアリ京師畑枝ノ與太郎ト云フ者爾今在テ造ル
穗ヲ太クアラ/\トシ眞穗ヲ太クヤスラカニ外ヘハヌルト内ヲ直ニスルニ付テ眞穗少長クナル也好テ用ユ
與太郎の茶筅は外穂が太く/荒く、中穂も太く外に向かって反っていた。この反りがまっすぐになるに従い、中穂の長さが少し増すというもので、宗偏は好んで使っていた。
奈良高山の影もないのが面白い。
惣メ利休形ハ編目ヲ絲二筋ニスベシ
竹ノ目ノ方前ニメ編留メ後也
(略)
利休形の茶筅は編み糸が二条。
竹の芽が前に来て、編み留めは後ろ。
現代の茶筅は編み糸が二条なんてケチ臭いことはない。
また、竹の芽も編み留めも同じ方向についていて、そっちが正面。
いつからか変わってしまったわけだ。
「利休形中棗」の形が不変なのは、「利休形中棗」の実物が残っているからである。
しかし茶筅の場合、消耗品なのでいつの間にか形状が変わってしまっても、原器にあたることができないから変化が判らない。
そういう事が判るという意味で、貴重な史料である。
*1:実際には竹冠+洗